聖地巡礼

 典型的な5月病になり、休日は趣味に興じることもなく、惰性的にYouTubeを見たりしていた。趣味自体も、映画を趣味と呼ぶには殆ど観ていなくて、もはや趣味ではないと自答していた。読書に関しても、小説は全く読む気も起らず、本棚から適当に手に取り、読んだことがある頁の文字の羅列を眺めるだけだった。コンビニで買ってきた『週刊ベースボール』を読みながら、テレビでプロ野球を見たりしていた。専攻に離れている分野であるほど、気楽に読めるため内容を楽しめている。それと積読していた『寄生虫なき病』というノンフィクションを読み始めたがなかなか面白い。

 

 特定の作品の聖地巡礼は殆ど行ったことはないが、以前行ったことがある場所が映画のロケ地だと最近分かった。田舎の原風景的な場所で、無人駅にはどこか哀愁があった。駅のすぐ近くに海水浴場があって、雄大な景色は心を落ち着かせた。市街地に続く傾斜には大きい坂があって、少し進むと住宅地があった。この場所に生まれていたら、海を好きになっていたかもしれないと思った。

 

 日本の原風景は各個人に共通項があるのではないだろうか。田園、無人駅、便が極端に少ないバス停、駄菓子屋のアイスクリーム、気怠くなるような湿度から来る暑さ。現在はそういった物が珍しく、自発的にそういった場所に赴く人は少なくなったと思案するが、煌びやかな場所よりも心身が落ち着き、癒しを得ることがある。こちらからその街の雰囲気だとかを感取し、自分の記憶と結びつけることで、新しい趣向を得られたような気がした。いい方向へ作用するように願う。